よく歌い、よく笑う。

2015年10月に生まれた突然変異体(ダウン症)ニャタは育っています

純粋な優しさ

 お風呂上り、保湿剤のヒルドイドローションを塗っていると、たっちゃん(2歳)が右の手のひらを左の人差し指でツンツンして、自分にも欲しいアピール。1滴、手のひらに落としてあげると、いつの間に覚えたのか、両手のひらをこすり合わせて伸ばす。そして、そーっと私の顔を両手で挟み、塗り塗り。「たっちゃんは優しいねえ」と思わず独り言のようにつぶやいてしまう。母一人子一人、これからもずっと二人で、と思うと、ほろりともしてしまう。

 きらりと光る、純粋な優しさ。別にたっちゃんは、見よう見まねでやってみたかっただけかもしれない。できることを自慢したかったのかもしれない。それが私にもたらす効果を期待してやったわけではないだろう。何なら、余計なことだったりして、親切にすらならないかもしれない。だけど、やってもらった私が感じるのは、優しさでしかない。優しさって何だろう? 相手への思いやり? でも、たっちゃんは私のことを考えたわけじゃないだろう。ただ、私たちふたりの間に、親密な関係はできている。そこで行われる、一生懸命で無垢な、働きかけ。

 本当は相手と良い関係を築きたくて、共により良い未来を作っていきたいのに、そこに入り組んだ感情が持ち込まれると、心に殻が張って、見るべきものが見えなくなる。夫との生活で学んだこと。そして、たっちゃんが教えてくれたのは、優しさに必要なのは知能じゃなくて、ただ純粋な生への指向、真っすぐに成長していく強さだということ

 お風呂上り、最近はパンツを履かせてくれようともする。ドライヤーを始めれば、抜けた髪を捨てるべくゴミ箱を持ってきてくれる。片手でゴミ箱の上端をつかんでハイハイするから、入っているゴミをばら撒きつつ。滑稽かもしれないけど、暖かく、癒される、たっちゃんの親切行為。

 私も、入り組んだ感情を脱ぎ捨てて、心の殻を打ち破って、たっちゃんに純粋な優しさを返したい。お母さんになるって、素晴らしい体験だな。