よく歌い、よく笑う。

2015年10月に生まれた突然変異体(ダウン症)ニャタは育っています

これがダルクのやり方なの?

 医学書院といえば真面目な教科書の出版社だったのに、紙の本が売れないこのご時世、生き残り戦略なのかと勘ぐってしまう。読みやすく時代を反映し、これからの分野を紹介してくれる、「シリーズ ケアをひらく」。そのラインナップの一冊、ダルクの上岡陽江「その後の不自由ー「嵐」のあとを生きる人たち」。

その後の不自由―「嵐」のあとを生きる人たち (シリーズ ケアをひらく)

 「その後」ということだが、まだ過ぎ去っていない、癒されていない、解決されていない過去をもつ人々の話なので、別に「その後」という感じはしない。もっと、今まで光が当たっていない「その後」の話なのかと思ったけれど、一般的に支援を必要とする状態の話だった。このシリーズ、著者の選択とか題名の付け方とか、出版社の方がうまいなあと思う。
 実践的なハウツーとしては、とても良い本なのかもいれない。だけど、直接的にこういう支援活動とかピアサポートの業界にいるのではなく、ただ世界を理解したり、自分が今いる所の参考にするために読んだ者にとっては、疑問が残る記載もある。例えば、重くしんどいけど、核心的な過去の話はしないって、それはどういうことで、どういう結果を生み出す方針なのか、この本だけでは解せない。一方で、どんな過去や、現在の心の状態をもつ人にも、今の体の世話をし、生活を立て直すことを手伝うのが有効ということに関しては、説得力をもって納得させられた。
 この著者、このシリーズなら、もう一歩踏み込んだ面白さがあるかと思ったけど。雑多な印象だった。でも、この界隈の雰囲気を知るために、読んで良かったと思う。