よく歌い、よく笑う。

2015年10月に生まれた突然変異体(ダウン症)ニャタは育っています

産後うつではないけれど

 思わずくすりと笑ったら、しつこくピースサインを続ける。「俺の前で久しぶりに笑ったね」と。父親に渡すのを忘れないように、机の上に置いてある写真。たっちゃんを抱く父と、ピースしてる私。夫が写真の中の私を真似て、同じポーズでピースしてみせる。昨日の夕飯の後。

 そんなに笑わなかったことはないと思う。けれど、たっちゃんが産まれてからの2か月、たくさん泣いたし、笑顔は減っていたと思う。赤ちゃんが生まれたのに、おかしいな。幸せいっぱいの時期なのに。

 たっちゃんがNICUに入院している間、たっちゃんのいないところで、たっちゃんのことを考えるのはやめることにしていた。もちろん、かわいい私の赤ちゃんのことを忘れることはない。ただ、これからどうなっちゃうんだろう…なんて思い悩むのは、どんどん悪い状況をシミュレートしてしまうから、いけないと思った。心臓の手術はいつ必要になるんだろう…手術しても良くならないなんてことになったらどうしよう…知的にはどこまで発達するんだろう…。たっちゃんの小さな顔と体を見れば、暖かくて柔らかい体を抱けば、ほかほかした赤ちゃんの匂いをかげば、そんな風に心配ばかりすることはない。ただただかわいいこの子と、一生懸命に生きていこうとだけ思う。

 産後うつみたいなホルモンバランスの影響もあるんだと思う。それに、夜中の授乳や搾乳で寝不足だし、日中もお出かけなんてできないし、そういった育児の疲れやストレスもあるんだと思う。いくら望んだ出産だとしても。プラス、たっちゃんがダウン症候群と診断されたこと。いろいろな合併症のリスクがあること。

 もっと笑って暮らしていかないといけないと思う。もっともっと、前よりも、赤ちゃんを迎えて笑顔は増えるはず。でも、今回の妊娠出産と子どもの入院で、知ってはいたけれども縁のなかったことを、たくさん身近に見聞きしてしまった。流産、早産、母体の障害、赤ちゃんの病気、障害。子どもをもつというのは、すごい世界に足を踏み入れることなんだなあ。こういうことをもっと広めたら、むしろ、少子化の役に立ちそうだ。お母さんになるというのは、ものすごいことだ。