食卓でたっちゃんが笑っている。箸が転げてもおかしい年ごろ、という表現が良く似合う、2歳。お母さんの顔に髪がかかったと言って笑い、その髪を払いのけてくれて笑い、そうこうするうちに自分の口からおかずがぽろりと落ちたと笑い、慌ててティッシュを差し出すお母さんをみて笑う。
何がそんなにおかしいのかと思いながらも、笑顔につられて笑ってしまう。一人じゃない幸せを感じる。たっちゃんが落とした箸を拾いながら、食卓にたれた醤油を拭きながら。世話はやけるけど、一人だった頃よりずっと幸せだなと思う。
床に落とされた布巾を拾う私の頭を、たっちゃんがなでなでする。柔らかく小さな手を、見ずとも感じる。この感触、湧き上がるこの感情。たっちゃんのことが大事すぎる。
大切なものを得て、失う恐ろしさと、束の間の至上感の間に、揺れ動いている。未知の感覚なのに、懐かしいデジャヴのような、出口のなさに囚われている。