スペシャルニーズの日々

この世界を楽しく生きていくために。

名もない気もち

 泣かなくていいんだから、と言われてはじめて、涙がほろほろとこぼれる甘さは何なんだろう。

 たっちゃんの場合、言われて自分が泣きたいことに気づくのかもしれない。まだ2歳だから、「ああ、この気持ちは悲しみなんだ」と教わるようなものなのかもしれない。名前も付けられない形のない気もちが心いっぱいに占めたところで、ぷすっと張り詰めた心の緊張を解放する「泣かなくていいんだよ」。お顔がぶさかわいく崩れて、お目目が見開かれて大きく丸く、うるうると涙があふれて。もうすぐ壊れそうに繊細で大切なものにしか見えない。

 ジブリ千と千尋にあったみたいに、名前を付けること、それを覚えておくことは大切なことなんだな。名前が存在を在らしめる。泣きたい気持ち、悲しみ。未分化な心の混沌を整理する感情。

 まあ、床で遊んでいて頭をテーブルの脚にコツンしちゃったとか、そういう些少な出来事なんだけど。そんな小さくて純粋なたっちゃんの心の働きに寄り添っていると、自分の心にもモクモクと湧き上がってくる何かがある。愛しさ? なんだろう、名前を探そう。お母さんの心の中にも、まだ名前のないものが残っているんだな。