よく歌い、よく笑う。

2015年10月に生まれた突然変異体(ダウン症)ニャタは育っています

完璧ではない人間が、あの頃の東京で

 現代に生きる一人の男性が主人公。日本の伝統的な私小説の系譜。

 

ボクたちはみんな大人になれなかった

ボクたちはみんな大人になれなかった

 

 

  燃え殻さんの処女作「ボクたちはみんな大人になれなかった」。前評判とか帯の推薦文とかがすごすぎて、他の方のレビューを見ても、宣伝負けしたみたいになっているのが残念。著者のツイートみたいに、心動かされる小説を読みたかったし。
 でも、ツイッターで人気が出て、出版され宣伝されて、それに一般読者から総体として適切な評価が付いて、という一連の健全さには何だか安心した。世の中捨てたもんじゃないなと。気になったら読んでみて、それぞれの心に感想をもてばいいんだと思う。その価値のある、この世に誕生すべき書物だと思う。
 私は、主人公が満足してるっぽい影で、女性たちが思いやられていないことは、やはり気になった。でも、あの頃の東京の雰囲気が感じられて、私が生きてきた東京とは少し違う部分社会だったけど、懐かしいような嬉しさを感じた。燃え殻さんなり他の作家さんなりが、この領域を盛り上げていって欲しいと思った。