よく歌い、よく笑う。

2015年10月に生まれた突然変異体(ダウン症)ニャタは育っています

呼んだら戻ってきてね、いつまでも。

 視界に子どもがいない! 

 二度寝するほど眠かったのに、一気に目が覚めた。「ニャタ! ニャタ!」呼ぶと、ザザザザとばかりに(いまだに変則的な)ハイハイで戻ってきてくれた。「何ですかお母さん、何かまずかったですか!?」とでも言いたげに、真面目で焦った顔をしてるから、大事に至らなかった安堵も加わって笑ってしまった。悪いのは目を離したお母さんだからね、ニャタは大丈夫だよ。

 朝、いつもどおり先にニャタが目を覚まし、横で寝ている私に乗っかったりして起こしてくれたのに、うっかりまた寝てしまった。その隙に、ニャタは隣の部屋の方に行ってしまったらしい。はじめてニャタを見失った。怖かった。

 でも、呼べば戻ってきてくれることもはじめて知って、嬉しかった。自分で動けない頃から、ミルクを吐いて窒息してしまうかもしれない赤ちゃんの頃から、ずっと心配が耐えない。それが2歳を過ぎて、少し頼もしくなった。

 自分が呼ばれていることを認識して、今やっていることを止めて戻る。これは、AIの方が得意そうだ。人間の脳は、他のことに気を取られたり、いま夢中になっていることを優先して無視したりしたりするだろう。子どもを育てていると、ロボットの作り方に思いを馳せることが多いのだけれど、人間のような頭脳をもった機械を作るには、与えられた課題をできるようにするだけでなく、自発的に次々湧いてくる意志が必要なのではないだろうか。そう、ニャタもいつも忙しそうに何かしている。そうして今朝も隣の部屋まで行ってしまったんだ。

 ニャタはいわゆる10歳の壁を越えないで生きていくのだろう。それが障害と言えばそうだし、いつまでも可愛いニャタのままと言えばそうだろう。なぜニャタやお友達たちは10歳の壁を越えないのか、興味をもって見ていきたい。