実録東京生活

この世界を楽しく生きていくために。

人間に寿命がある世界で生きていきたい

 「寿命ですか?」とご家族に聞かれて、「寿命ですね」とお答えした。この仕事を10年やって、初めて。

 人工知能(AI)だったら、誤嚥性肺炎とか、慢性心不全急性増悪とでも診断するだろうか。まさか、100歳を超えたら寿命とするなんて、単純な計算式は搭載しないだろう。

 決してAI批判ではない。膨大な知識の蓄積や、複雑かつ高速の情報処理に関しては、ぜひお手伝い頂きたいと思う。その結果のアウトプットが正しいのか間違っているのかを、チェックする能力は持っていないといけないけれども。

 そして、医者は別のことをしなければいけない。それは何だろう? 患者家族といっしょに迷ったり、言葉で明確に表されない雰囲気を感じ取ったり、喜んだり悲しんだりを共にすることだろうか。

 心よりご冥福をお祈り申し上げながら、ご本人ご家族、そして在宅医療の環境に出会えたことに感謝している。臨時往診に伺った時、もう血圧が測れないくらい低かったのに、そのことに誰にも気づかれていないくらい安らかだった患者さんを、その人生を、尊敬する。いつも通り、ご自分たちの食事と、患者さん用の柔らかい食事を用意している最中だった、暖かい台所そのものみたいなご家族を、改めて大好きだと思った。

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