よく歌い、よく笑う。

2015年10月に生まれた突然変異体(ダウン症)ニャタは育っています

分かる人、分からない人

 分かるとか、理解するって、何だろう。どうしたら、学べるんだろう。自分のことを振り返ってみる。テストで点がとれなかったのは、記憶量が足りなかったから。それは、記憶力というよりも、勉強時間の問題だったと思う。それに、出題範囲なんて膨大で、網羅しきれないからしょうがない。数学の文章題とかは、解けないことはもちろんあったけど、知らない公式とか、パターン解析に慣れてなかったとか、やっぱり勉強の質より量の不足だと感じてきた。

 学科試験以外だと、どうだろう。運動神経の問題。コミュニケーションの問題。芸術分野の、感性とかセンスとかスキルの問題。いずれにしても、認知機能の分野に関して、自分がどうしても「分からない」と感じることは無かった気がする。誰かが平易に解説してくれれば、分からないことは無い気がする。

 これってどういうことだろう。自分の限界には、自分では気づけないのか。一昔前に流行った、バカの壁というやつなのか。

 

 そんなことを考えながら、参考書を2冊。ヴァスデヴィ・レディ「驚くべき乳幼児の心の世界」。

驚くべき乳幼児の心の世界

 ドーナッツ論の佐伯胖先生が訳。乳幼児は、従来考えられてきたよりも、もっとずっと認知能力を持っている。母親などの、特定の人物との関係の中で発揮され、発達する。

 「ほら、こんなことができる。あんなこともできてるでしょ」と示される赤ちゃんの様子は、母親として賛同する。そうそう、やっぱりできてるよね、私の赤ちゃんも。わかるわかる。ていうか、今までの学問だと、これって認められてないんだ。

 でも、この本は読みにくい。難しい。文章は平易と言っていいだろうし、訳もこなれているんだけど。何ていうか、回りくどいというか、もっと少ない言葉で整理して伝えて欲しい。実例とか、こんな機能もあるよっていう内容的にも、もっと絞って、「それで結局何を主張したいのか」を浮かび上がらせて欲しい。

 

 2冊目。ルーヴェン・フォイヤーシュタイン「「このままでいい」なんていわないで! ダウン症をはじめとする発達遅滞者の認知能力強化に向けて」。

「このままでいい」なんていわないで!―ダウン症をはじめとする発達遅滞者の認知能力強化に向けて

  付録として、「媒介学習体験(MLE)相互作用における基準と分類」とか、「認知機能不全」や「認知地図」と名付けられたリストが載っている。私の知りたかったことは、付録にまとめられていた感じ。そしてそれらのリストを理解するのに、本文が実例や解説として役に立った感じ。逆にいえば、本文だけ読んでいても、冗長だし現代の主流とはかけ離れている(異なる用語で話される)し、あまりまとまった本ではない。ただ、「人間であるならば(認知構造の)変容は可能」とか、その方法としての「媒介(者)を用いる学習」とか、考え方は高尚かつ奇をてらったものでもなく、面白かった。

 

 結局、人間が学習したり、認知機能を発達させたりするには、二者関係を築いた相手の存在が重要であるということ。でも、「逆も真なり」ではない。

 脳細胞の数が足りないとか、神経伝達物質やその受容体が少ない、みたいな生物学的基盤ではなくて。抽象概念が獲得できないとか、後付けの理論でもなくて。そのプロセスが成立しないのは、どのようなできごとなのか、それが知りたい。