誘われて、押し入れに入る。薄暗くて狭くて、肌触りの良いリネンに触れて、ここからどこかに行けそうな気がする。
隣ではニャタが、暗闇にも目をきらきらとさせて、笑いをかみ殺している。2歳のくせに、ストレートに笑わない子。何を考えてるんだか。その横で、この瞬間に夢中になっている私。
「また何してるのよ、そこの子とお姉さん!」
と、私の母から皮肉っぽく声がかかった。フルタイムで働いて、ニャタの食事の準備や子育てのあれこれを母に任せっぱなしにしている私は、母に言わせるとお母さんではなくお姉さんらしい。そして、ニャタもそう認識していると、母はいう。ニャタが、「お母さん」とか「お姉さん」とかいう概念を持っているのかは謎だ。でも、私には指示を出してきたり、言うことを聞かなかったり、まあ友達くらいに考えられている感じはする。一方で、ご飯を食べさせ服を着替えさせているバアバは、確かにニャタにとってお母さん代わりだしね。
私はすぐ、というか、ついつい、ニャタに迎合してしまう。何でもいいよ、と言ってしまう。ニャタのことを本当に考えたら、躾けなきゃいけないと母には言われるけど。やっぱり可愛いし、ニャタの芽を摘みたくないという思いで、ついつい。
おっぱいをあげることだけが、お母さんの印かもしれない。2歳を過ぎて、もちろん栄養は食事からとっているんだけど、実はおっぱいもまだ先っぽを潰すとミルクが出てくる。何よりニャタが、寝かしつけや何か気持ちを落ち着けたい時とか、まだおっぱいに手を伸ばして、口を近づけてくる。
でも何で、隣から遊びに来て「かわいいー」なんて呑気に言ってるお姉さんみたいになっちゃうんだろう。自分でもそう思う。