「介護するからだ」という本を読んだ。
介護の現場に学者さん(著者の細馬宏通氏)が潜入して、そこで行われていることを、私たちにわかりやすく解説してくれる。もしかしたら、介護者の人たち自身さえ言語化、つまり意識化してないことも、立ち現れる。そして、その必ずしも言語によらない、認知症高齢者と介護者のやり取りは、人間の本質として興味深く、また介護に関わる人には実際的に有益なことだ。
介護は一般的に行われているのに、こういった研究の一般への還元は、あまり見られない。でも、著者は業界で十分にご活躍されているようだ。そして、このような領域を今後どのように一般化していくのかということは、この本のテーマではないようだ。認知症や高齢や様々な病気により要介護である当事者や、介護者が著者であれば、困り感やその解消を求める社会への訴えが見られるだろう。でも、この著者の先生は困っているわけではなく、介護の現場の面白い事象が研究対象なのだろう。そんな軽い閉塞感も覚えた。
この本で扱われている興味深いできごとが、ぜひ研究を超えて、実践の枠を超えて、社会に浸透してほしい。