実録東京生活

この世界を楽しく生きていくために。

きみのつくる世界には幸せが溢れている

 時間もお金も、自分の好きに使えない。夜中も何度か起こされて、あり得ないくらい寝不足。自宅周辺と職場以外に出かけられもしない。好きな音楽さえ聞けない。食事だって食べたいものを用意する余裕はなく、他のことをしながら慌てて掻き込む感じ。そんな毎日が、幸せ過ぎる。

 欲しかったものは、ほとんど手に入れられなかった。憧れていた生活と程遠く、将来の心配をする余裕さえない。唯一ここにあるのは、ニャタ。2歳半だけど、1歳児くらいの機能をもった人間だ。

 子どもの頃、親にはなかなかに不自由のない生活をさせてもらった。デパートでブランド物の服。食事もおやつも手作りを中心に、チェーン店じゃないレストランでの外食や、お菓子といえばケーキ屋さんで。夏休みや冬休みには旅行が当たり前で、有名な観光地を網羅する勢い。恵まれた環境のおかげで、勉強もそこそこできた。友達ともうまくやっていた。でも、無邪気な子供時代を過ぎると、幸せを感じられなくなっていった。

 今がどうしてこんなに幸せなのか、うまく説明できない。笑顔で踊っているニャタ。抱き着いてくるニャタ。いじけたり、泣いたりもするニャタ。母性本能なんて言葉は社会が作ったもので私は好きじゃないと思ってたけど、これがそうならなんて素晴らしいんだろう。

 これからどうなるかわからないとか、誰かの目に触れた時の誰かの気持ちとか、そんなことを考えると言えないけど。私の心の隙間にぐりぐりっとトミカを詰め込み、ベッドサイドランプのコントローラーを振り切って明々と闇を照らし、ニャタは今日も世界をつくり続けている。