加湿器がある。ボタンには、「強」「弱」「切」がある。ニャタは加湿器を切りたがる。音が煩いのかもしれないけど、たぶん、ニャタが切ると私たちが騒ぐのが面白いのだと思う。東京の冬は湿度が低すぎて、ニャタが風邪を引くのではないかと、私たちは気にしているのだ。だけど、加湿器をつけるとすぐにニャタが消してしまう。それを阻止しようとすると、自分の思いがとおらないことに対して手足をバタバタさせてうーうー言って怒るので、隙を見て「弱」でつけておくことが多い。
今日のニャタは、加湿器を「強」にする真似をして、それから1秒考えて、手足を泳ぐように動かし、少し笑いながらうーうー言って、こちらの顔を見た。「加湿器つけたら、僕がバタバタうーうーするんだよ」とでも言いたげに、いたずらっぽく。
このメタ認知。この感情コントロール。なかなか結構なもので、そろそろ負けてしまいそうだ。確かに、ニャタの方がしょっちゅうニコニコしていて、既定の環境の中で上手に暮らしている感じがする。
そんなニャタを抱っこする。薄茶色のマイクロフリースを着ているときなど、ぬいぐるみのこぐまちゃんのようだ。「歩けない」と両手を挙げるニャタと「しょうがないねー」と抱っこする私を、「歩きなさい!」と叱咤するバアバ。私とニャタは共犯関係。