ある朝、もうすぐ4歳のニャタは、寝起きが悪かった。前の晩もいつもどおりに寝たし、夜中もそんなに起きなかったし、その後で体調を崩すこともなかったから、なぜかは不明なままだ。
いつもはさっさと布団から起き上がって、みんなを起こして回ったり、さっそくおもちゃで遊び始める。その日は、布団の上で寝返りをうったり、手足をバタバタしたりしていた。最終的に、どうやって朝食の席に連れてきたのかは忘れてしまった。
しばらくご飯を食べていたら、なんとなくいつもどおりみたいになってきた。何気なく、「ニャタは可愛い良い子だねー」と呟いた。おまじないのように、私がよく言う言葉だ。
そうしたらニャタが真面目な顔をする。「僕は今朝、良い子じゃなかったよ」と言ったのだけど、彼はそんなにしゃべれないから、どうやって伝えてきたのだっけ。たぶん、まだ敷いてあった布団を指して、手足をバタバタさせてから、手を振って否定を示したのだと思う。
「そんなことないよ。ニャタは可愛い良い子だよ」「誰だって、いつもニコニコしているわけにはいかないよ」「大丈夫だよ、たまには怒っても、今こうやってご飯を食べているんだから、もういいんだよ」。そう伝えると、安心したようにニッコリした。
一部始終を聞いていたバアバが、「ニャタなんていつもニコニコしている方よ、カアカアが小さい頃なんて…」と愚痴りはじめた時には、もうニャタと私はすっかりいつもどおり楽しくご飯を食べていた。「その話題はもう終わってるよ」とバアバの話は遮っておいた。
色んなことを考えるんだなあ。色んな気持ちが生まれてきてるんだなあ。人間って不思議。毎日よーくよーく眺めているつもりでも、あの生まれたての赤ちゃんからここまでどうやって育ってきたのか、もうよくわからない。