きっかけは、蒸し羊羹だった。職場に頂いたけど、うちは昔ながらの給湯室とかないドライなオフィスだから、誰も切って食べたりしない。賞味期限を過ぎて置物と化す前に、もらって帰ることにした。その姿を見て話しかけてきた人がいた。
後輩男性:何ですか、それ?
私:蒸し羊羹。
後輩男性:それ、何ですか?
私:え、知らないんだ。普通の羊羹は小豆を寒天で固めてるでしょ、
後輩男性:それも知らないんですけど。
時間が流れたことを、芸能人の流行り廃りで、振り返ったりする。移り変わっていくものだから。でも、不変の常識と思っていたことを、若い人が知らないことに驚いて、世の移ろいに置いて行かれたことを思い知るとは思わなかった。ジェネレーションギャップなんて言葉も使われなくなったけど、自分も年をとったなあと思う。だいたい、いつまでも下っ端の気分だったのが、いつの間にか使えない上司になっているし。
次の世界に移らないといけない。私の次は、お母さんとしての人生。あの頃のように、おしゃれできなくても。あの頃はくだらないと思っていたことが、今となっては時々の優雅なことになっていても(コンビニでご飯を買って食べる、量販店で靴下を買う、自分でマッサージをする)。たっちゃんと過ごした3年間が、私を別人のように優しく厳しくして、この世界に意味を感じるように変えた。毎日ありがとう、私の小さくて可愛い2歳のたっちゃん。