遅刻しそうだった。パジャマを脱ぎ捨てて、でも手に持っていたゴミを捨てに動くと、パジャマは床に置いてけぼり。
そこにニャタがいた。何をするでもなく、私の周りをウロウロしていた。「ねえ悪いんだけど、カアカアのパジャマを洗濯に持っていってくれない?」冷静を装って頼んでみた。まだ発語が単語レベルの、刻み食全介助の、完全オムツな子に。
「ハイ」と返事して、パジャマを抱え上げるニャタ。袖が垂れてるけど、床に届いていないので、踏んで転ぶこともないだろう。まっすぐ洗濯カゴのある洗面所へと、確実に歩いていく。
些細なことかも知れないけど、世界がひっくり返るようだった。この子は私を助けてくれるんだ。「カアカア、キテー!」呼ばれた。やっぱり。でも、綺麗に洗濯カゴに入っていた。自慢したかったらしい。褒められたかったらしい。「すごいね!」「カアカア助かったわー」大袈裟に褒めちぎって、「これからも、まだ手伝ってくれるかな?」「ハイ!」とご機嫌だった。
ということで、結局見に行かなきゃいけないなら自分で持っていくよっていう話なんだけど。全体を見通す力がない、相手の立場に立って考えられない、自分中心主義から脱却できない。そう言えばそうだけど、尤もらしい言説は何だか気持ちにぴったりしない。
ニャタは充実した生活を楽しく送っている。私は、早く正しくご飯を食べて、合理的な行動でお金を稼ぎ、そんな毎日が楽しいのか?といえば、ニャタがいるから楽しい。