ニャタが言うことを聞かなくてヒヤヒヤする。文字通り言うことを聞かせたいんじゃなくて、事故にあったりするのが心配なのだ。道を歩いていて向こうから自転車が来る。危ないから端に寄りなさい、と言う。しかし、彼は動かない。
一言で言うと、こだわりみたいな現象なのだと思う。理解できないわけではなくて。体が動かないのは、頭で動こうとしてないからで。だけど、だからと言って、ニャタが事故にあった後に、「特性だからしょうがなかった」とは思えない。まだ諦めきれない。
「母さんは、ニャタがとっても痛いするのを見るのは嫌だ。だから、言うことを聞けないなら、もうサヨナラする。母さんは、ニャタとニャトと、明日も明後日も、楽しく暮らしたかった。でも、ニャタが痛いするのを見て、母さん言ったのに!って思うのは本当に嫌。だから、サヨナラするしかない」と言ったら、ニャタは泣き出した。良かった、いつもみたいに、「サヨナラでいい!」と言われたら、分からず屋にカッとしてしまいそうだった。その後、しゃくり上げながら、「僕は、ちゃんとするから、明日も明後日も、楽しく暮らせます」と言ってきた。「ほんとね?それならサヨナラしないよ」と言ったら、また泣きながら独り言で、「良かった、良かった」と言って、珍しく泣き続けていた。ふと見たら、授乳中のニャトの足の付け根に、反対のオッパイがポタポタと水溜りを作っていた。お風呂上がりの騒動で、暑いし、私たちは服も着てなかったのだ。
実母には「そんな脅しみたいな、可哀想に。‥それはニャタちゃんの特性でしょう」と言われた。でも脅しじゃないから、ニャタに脅しと思われても困るのだ。ダウン症は治せない、知的障害も治せない、ニャタ個人の性格だって治せない。それでも私は、起こるはずのない奇跡を起こしてでも、ニャタを守っていくしかないんだ。
さてさて明日からどうなるか。やっぱりニャタは言うことを聞けないと思う。それでもニャタのどこかに私の気持ちが届いて、ニャタに神様の御加護がありますように。