頭をコツンとぶつけて、シーンとした後、ウェーーーンと泣いた。
私(お母さん)が「あ!」と小さく叫んでしまったので、たっちゃん(2歳)はびっくりして泣いたのだろう、とバアバは言った。確かに、大してぶつけてないし、たっちゃんは大きな音とかでびっくりすると泣く。それにしても、すごく大きな声で、すぐに抱っこしたのに、しばらくの間、泣いていた。
切なくなった。泣かれても、対応できなかったらどうしよう、と考えたら、悲しくなってしまった。戦時中のお母さんたちは、ひもじい子供に食べ物を欲しがられてもあげられなくて、どれだけ心を痛めただろう。たっちゃんが病気になったり、災害に巻き込まれたりして、お母さんがどんなに頑張ろうとしても苦痛を取り除けなかったら、どうすればいいんだろうと心が張り裂けそうになって、もうノイローゼだと思った。
冴えない顔をしていたら、お母さんのお母さんであり、お母さんの先輩であるバアバが話を聞いてくれた。そして、どんな時でも、お母さんが慰めてあげれば、子どもの心理的苦痛を緩和できるから、それでいいのだということ。でも、母親になると、新聞の三面記事で子どもが交通事故にあった話を読んで泣くよういなるのだということ。そう語ってくれた。
大切なものがあると、失うことが怖い。損なうことが心配。お母さんになるって、そういうことなんだ。お母さんになんかならなきゃよかった、なんてことは、やっぱりないんだけど。