よく歌い、よく笑う。

2015年10月に生まれた突然変異体(ダウン症)ニャタは育っています

5歳で2歳半

 ニャタ5歳。発達年齢は2歳半相当。そろそろ、私が自分がどうだったか思い出せる年齢になってきた。

 私はぼーっとした子だった。幼稚園に年中から入って、帰りのバスが何ルートかあって、どのバスに乗れば良いのか分からなくて泣いた記憶がある。同じ学年の友達が、しっかりしていて、そんな私を慰めて正しいバスに連れて行ってくれた記憶がある。しかも連日。そのうち私は、その子を探して頼るようになった記憶がある。自分で自分のバスを覚えれば良かったのに、と今は思う。

 ニャタは、大人が笑ったことを繰り返す。私がニャタをくすぐったりキスをしたりしたときに、ニャタが「やめてよね」と私に言ったけど、それが「やめてとて」に聞こえて、私が「やめてとて?」と笑ったら、それからニャタも「やめてとて」と言うようになった。私がこのくらいの年ごろの頃、ウケ狙いなんて出来なかった。ぼーっとしていたし、恥ずかしがり屋でもあったから。

 ニャタは怒られることにも耐性があるようだ。物を落として、危ないものだったりして私が思わず大きな声を出したり真面目にニャタを注意すると、鼻が赤くなって涙をぽろっとこぼして鼻水を垂らす。それがあまりに幼気で、ついつい私はすぐに「でも大丈夫だよ。強く言い過ぎたね、ごめんね」なんて言ってしまって、そうするとニャタは涙も乾かず鼻も赤いままで、また落としてニヤッと笑う。こんな図太いところ、私には無かった。どうしてよいか分からなくて意地を張ることはあったかもしれないけど。そうそう、今日なんて「さすがにこれは、『ごめんなさい』って言って」と私がニャタに言ったら、小さい声で「ごめんなさい…ごめんください…めんください…あはは」と、小さい声で笑っていた。

 私とニャタは全然違う人間なのだけれど、ニャタは今楽しそうに生きているし、私もおかげで今までになく楽しい毎日を送れているから、私の人生で一度でもこういう楽しい時期があって良かったなと思う、たとえこれからどうなろうとも、そのくらいに。結局こんな悲観的に考えてしまう私を、最高に楽しませられるニャタってすごい。