よく歌い、よく笑う。

2015年10月に生まれた突然変異体(ダウン症)ニャタは育っています

順番が逆

 朝5時過ぎにニャタが起きたので、「もう少し寝ようよ」と声をかけた。一瞬で再び寝入った私が、変な音で目を覚ましたのは5時半前。ニャタがしくしくと泣いているではないか。お腹が空いた、とのことだけど本当か? 色々様子を見ながら、朝食を準備する。いつになくぼーっとして視線も合いにくいニャタ。恐る恐る食べさせると、みるみるうちに元気になって、低血糖発作でも起こしたのか。前日の夕食は確かに小一時間いつもより早かったけど、いつも朝食をなかなか食べたがらないから、間隔はむしろ短かったのに。

 だいたい、一人で泣いていないで、私に言ってくれればいいのに。ニャタにそう諭したけれど、どこまで響いているのか。と、ここまできて気づいた。ニャタがお腹が空いて、泣いて私を起こしてくれたのは、この4歳の終わりにして初めてのことだ。

 産声は元気に泣いていたと、バアバは言う(私は覚えていない)。次にニャタの鳴き声を聞いたのは、年単位で後だった。赤ちゃんのニャタは、お腹が空いてもオムツが濡れても、泣くこともなく、起きることさえ無かった。私は昼夜問わず目覚ましを3時間おきにかけた。でも、1-2時間の睡眠ではやっていけなくて、数か月も経つと、目覚ましを1回すっ飛ばしてしまうことが時々あった。それでもニャタは何の変わりもなく、具合悪そうにならないのはよいけれど、多く飲むこともなく、ガチガチに張ったままのオッパイとちょっとだけすっきりした私の頭だけが、出来事の証拠だった。

 当時の主治医に「泣かないのは、呼吸か発声の力の問題でしょうか。それとも知能でしょうか」と質問してみたけれど、「そう言っていて、翌年には泣き声ががうるさいとかよく泣くとか今度は言い出すお母さんがいっぱいいるよ」とにっこりされて。ああ私は子供の障害を心配する親という立場になったのだなと思ったけど、その後のあれこれから、もしかしてドクターにも分からなかった(とか興味がなかったとか)のではと思ったりもする。

 最近のニャタはけっこう口が達者で、「もう寝よう」と言えば「寝ません!」と上手に否定するし、工事の業者さんがくれば「こちらへどうぞ」なんてどこで覚えたのかというような台詞も言うし、「お腹が空いた」くらい言えそうなものだけど、そういえば聞いたことがない。なんかいろんなことの順番が逆というか、どういう風に成り立っている人なのか、いまひとつ謎な存在である。